2006-01-15 Sun
小泉内閣になってから始められた政策に「構造改革特区」があります。その主旨や経緯については「経済財政諮問会議」のサイトを見て下さい。
このサイトでは「構造改革特区」を創設した目的を下記のように2つにまとめています。
1.地域の特性に応じた産業集積や新規産業の創出等により地域経済を活性化する。
2.特定地域の成功事例を全国的な規制改革への波及することで我が国全体の経済を活性化する
この〈飯能での構造改革特区〉という項目タイトルでは、飯能から特区申請できるような事業案件を考えていきます。
きょうの第01回で書きたいことは、「飯能という地域の特性応じた産業集積」を必ずしも「林業」ということに限定しないほうがいいのではないか?ということです。
飯能の「地域特性」というと、誰もが「東京に近い里山・林業」を挙げますが、そのような特性は奥多摩や青梅などの近隣の自治体も同じようなものです。地域に広大な山林を抱えている自治体の殆どが「林業の再興」に期待を寄せています。
産業として林業を考える時、その林業にまったく無縁だった私から観ると、いま各地で試みられていることの多くは、一つの「固定観念」 に縛られているような気がしてなりません。
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2006-02-13 Mon
この〈環境林改革特区〉という項目タイトルの第01回で「住民が林業に求めていることは良質な山林環境であって伐採されて売り出される木材ではない」ということを書きました。
そこで第02回では「森林環境を維持する視点」について書いてみました。
環境林については「環境林の機能と構造」を参考にして下さい
山林が荒廃するのは、「人間による適切な管理の手が入らない」からだと言われています。
そして「管理できない」のは「採算に合わない」からだと言われてきました。
しかし、それは「林業」というビジネスの都合だけで考えてはいないでしょうか。
「林業」の都合だけで考えているから、
「林業で充分な利益が出るようにして欲しい」
そのためには
「低価格の木材の輸入を規制しよう」
という考えしか浮かばなくなってしまうのではないでしょうか。
規制緩和が誤解されるのは、
私たちの間で 「経済的規制」 と 「社会的規制」が
正しく区別されていないからです。
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2006-03-18 Sat
この〈環境林改革特区〉という項目タイトルの第01回(01/15)では「新たな山林経営の先駆的な実験を」ということについて書きました。第2回(02/13)では「日本の森林は林業保護よりも環境保護を優先させよう」ということを書きました。
第03回のきょうは、「山林の所有権と環境保護の義務」について書いてみました。
山林の価値が重要になるにつれて、私は「山林所有者の権利と義務」について疑問に思っていることがあるからです。
現在では、自分の所有地の中であっても、自由に物を燃やすことは禁止されています。ダイオキシンをはじめとする大気汚染の元凶になることは広く理解されています。
山林には個人の所有者がいます。そこに生えている植物は、植えたものであれ、自生したものであれ、すべて所有者の物です。それは部外者にもよく理解できることですし、納得できることでもあります。
では、その山に植林されている杉や檜などから大量に発生する花粉が周囲の人たちに及ぼしている「花粉症」という被害について、山林所有者には責任がまったく無いのでしょうか?
私はなにもここで山林所有者を非難することが目的ではありません。これを指摘したのは「山林所有者の権利と義務」について考える最適なきっかけになると思っているからです。
他人の山林をハイキングしていて、そこに生えていた茸や山菜を採取して食べて、毒に当たって死んだとしても、そのことで山林所有者の責任を追及する人はいないでしょう。
山林に生息する野生動物(鹿・猪・猿・狸・狐)はどうでしょうか?
それらの野生動物に畑の作物を荒らされた農家の人でも、野生動物が生息している山林の所有者に対して「野生動物を生息させないでくれ」と抗議する人もいないでしょう。
山林が荒廃すれば、楽しいハイキングもできなくなります。貴重な水源も枯渇します。いまさらここで言うまでもなく、山林には水と空気を浄化する機能があります。清流も清浄な酸素も山林のもたらす自然の恵みです。それらの「貢献」に対して、山林所有者が金銭的な報酬を受けることはありません。
いま日本各地で、林業の衰退と山林の荒廃が指摘されています。これらのことは20年も30年も前から言われていたことですが、改善されるどころか益々悪化する一方です。
飯能市内の山林には、市有林と私有林があります(県有林と国有林は無いと聞いています)。市有林は、その権利も義務も飯能市にあるのですから、これから挑戦する実験にはすぐに取り組めます。
問題は「私有林」です。
所有者がその土地に住んでいる人もいれば、市外に住んでいる人もいます。その所有する私有林で自ら林業を営んでいる人もいれば、他の仕事に従事している人もいます。つまり、私有林の中の環境保護に熱心な人もいれば、放置している人もいるのです。
しかし、大気や水源、花粉や野生動物への対策を考えれば、飯能市内の山林全域を一体で効果的に管理保全に取り組まなければなりません。
そこで、都会に最も近い山林を抱えている飯能市だからこそ、全国に先駆けて挑戦してみて欲しいことがあります。
それは、市内の山林を「土地所有」と「林業経営」と「環境保全」を区別して考えてみることです。
まず、山林所有者に「土地の権利を制限することに同意してもらう」のです。その替わりに、「山林所有者であるが故の義務」を免除してあげます。
具体的には、飯能市が市内すべての私有林に対して強制的にでも「借り上げる権利」を特例として国(総務省と環境省と農水省と法務省)に申請するのです。
その「私有林の借り上げ」とセットで、「環境保全のための様々な義務」を山林所有者に替わって肩代わりするのです。
もちろん、「借り上げる面積に応じた地代」は地主に毎年きちんと支払います。その替わり、国や県から「環境保全のために支給される種々の補助金」は、すべて飯能市が受け取ることになります。これで、山林所有者は何もしないで済みます。
これが「土地所有と環境保全の区別」です。
これに加えて「林業経営」も区別します。それには、山林での種々の作業を「林業としての作業」と「環境保全としての作業」とに区別することです。
植林や間伐、そして木材として売れる木を伐採して保管場所に運び出すまでを「環境保全の作業」として、飯能市が責任を負います。そして、保管場所に運び込まれた木材をそれからどのようにするかは、「林業経営」の人たちの分担にするのです。
つまり、公的事業としての「環境保全」と、ビジネスとしての「材木販売」とを区別して、最大の効果を発揮しようというのが、この「土地所有」と「林業経営」と「環境保全」との区別です。それを実現するために「構造改革特区」を申請するのです。
環境保全の作業と区別してからの「林業経営」については次回の第04回で書くことにします。
