2007-07-10 Tue
なぜ、あなたは「起業したい」と思っているのでしょうか?
私が担当する起業準備講座ではこのような質問をすることがあります。
その質問に対する受講生の回答は大別すると下記のようになります。
1.いままでの会社を退職した経緯を話す人
2.サラリーマンでは満足できないことを話す人
3.「もっとお金を儲けたい」ということを話す人
4.「とにかく社長になりたかった」ということを話す人
5.「これからの人生を変えたい」ということを話す人
6.自分が手がけたいビジネスの内容を説明しだす人
あなたは、上記1~6のどれに相当するでしょうか?
講座の会場では「同じ受講生同士の目」を意識して、本音を話さずに建て前だけを話す人もいますが、あなたの回答は誰にも知られないのですから、ここは一つ本音をみつめて下さい。
これは、私が起業準備講座を始めた23年前から、受講生に事前に記入してもらう<事前アンケート>で必ず訊いてきた項目の一つです。
乱暴な意見に聞こえるかもしれませんが、
この「回答」から、その人が「本当に起業する人」なのか、それとも「結局は起業できない人」かが判ることがあるのです。
さらには、起業した後、「続けられる人」なのか、「続けられない人」かも判ることがあります。
私は社員研修会社に8年間(27才から35才)ほど勤務していましたが、その時に、
起業の成功要因と失敗要因は、「起業したい」と思うにいたったその人の本当の<動機>の中に潜在している、ということに着眼するようになったのです。
幸い、自分の周囲(同僚・友人・知人)の中には、脱サラして「成功した人」も「失敗した人」も大勢いました。「脱サラするぞ!」と言いながらいっこうに実行しない人」もいたのです。
その人たちを観察し、会話をして、その人の<起業動機>を知るたびに、
<起業動機>と<起業の成功要因・失敗要因>の因果関係の正しさを実感していたのです。
だから、私自身は、この<起業の成功要因・失敗要因>の解説、伝達をビジネスにしようと思って、1985年6月、35才のときに脱サラして、いまの仕事を始めた、というわけです。
2007-07-10 Tue
そもそも、あなたは「起業する」こと自体が目的なのでしょうか?
それとも、「起業する」ことは、何かの目的を達成するための手段なのでしょうか?
結論から言えば、私たちにとって、起業は<目的のための手段の一つ>であって、「起業する」ことそれ自体が目的なのではありません。
では、起業してまで達成したい目的とは何なのでしょうか?
この問いに対する答えは実に多種多様になりますが、思い切ってまとめると下記の二つに大別されます。
A.自分の人生を充実させたい
(勤め人のままでは充実しないと思ったから起業したい)
B.金儲けをしたい
(勤め人の給料だけでは大金は掴めないから起業したい)
「サラリーマンでは満足できないから起業したい」と言う人でも
「起業したほうがサラリーマンでいるよりも人生が充実すると思うから」と答える人もいれば、
「起業したほうがサラリーマンでいるよりも楽に金儲けができると思うから」と答える人もいます。
「この仕事で起業したい」と思っている、という人でも、
なぜその仕事で起業したいのか、と、さらに突っ込んで訊いてみると
「そのほうが人生が充実すると思うから」と答える人もいれば
「そのほうが儲かると思うから」と答える人もいます。
あなたは<人生の充実>と<金儲け>のどちらが本当の目的なのでしょうか?
2007-07-11 Wed
<金儲け>のために起業したいという人に
「では何のために金儲けがしたいのか?」と訊くと
「お金が有れば人生が充実するからだ」と答える人もいます。
「人生を充実させる手段の一つとして起業する人」も、けっして<金儲け>を否定しているわけではありません。
「人生を充実させる仕事をして、その結果としてお金が儲かればいい」と考えています。
しかし、「起業したい」という人の話しをじっくり聴いてみると
<人生の充実>を優先させて「お金が儲かればいい」と思っている人と
<金儲け>を優先させて「お金があれば人生が充実する」と思っている人
との違いはすぐに判るものです。
その違いは<自分が手がけるビジネスの探し方>に顕著に現れるからです。
「これからどのようなビジネスで起業すればいいのか?」を考える時、
<金儲け>が目的で起業したいという人は
「これからどのようなビジネスが儲かるのだろうか?」
「これから有望なビジネスはなんだろうか?」
という視点で探そうとします。
<これから有望なビジネス>で起業したいのは、そういうビジネスのほうが楽に儲かるだろうと思っているからです。
結論から言えば、
「儲かるビジネスで起業したい」と考えている人の
大部分は、結局は「起業できない人」になってしまうのです。
なぜなら、「楽に儲かるビジネス」とか「確実に儲かるビジネス」という視点で探すと、結局は「これだ!」「「このビジネスだ!」という決断がいつまでもできないからです。
中には、「儲かりそうなビジネス」だと思い込んで起業する人もいます。
しかし、そういう人はせっかく起業しても「続ける」ことができません。
なぜならどのようなビジネスも「思うようには儲からない」からです。
「金儲け」が目的で起業したのですから、儲からなければ続ける気にならないのは当然と言えばあまりにも当然なことです。
ところが<人生の充実>が目的で起業した人は、この「儲からない」時代を乗り切ることができるのです。
その理由は次回に書きます。
2007-07-12 Thu
<金儲け優先>で起業した人が失敗し、<人生の充実優先>で起業した人が成功するのはなぜでしょうか?
その理由をいままで述べたことを含めて簡潔にまとめたのが下記の5つです。
1.人生を充実させる仕事は<自分の足下>にしか無いので、すぐに見つけられるから
「儲かるか?儲からないか?」は起業する前にいくら考えてみても確信は持てないのですが、「この仕事で自分の人生は充実するか否か?」はすぐに確信が持てるので迷わずに始められるからです。
2.どんなビジネスでも「儲かるようになる」のにはある程度の時間がかかるが、「仕事での充実感」は起業する前から、いつでも、いつまでも実感できるから
だから<金儲け優先>の人は「続ける」ことができないのですが、<人生の充実優先>の人は「続ける」ことができるのです。
3.<本当に好きな仕事><誰にも負けないほど得意な仕事><自分にとって最適な仕事>には「苦しいと感じる」ことが無いから
だからいつまでも「続ける」ことができるのです。
どのような仕事でも「人の役に立つこと」、社会的意義の有る仕事なら、続けていれば、いつかは報われるからなのです。
4.<人生を充実させる>仕事は、その仕事に取り組んでいるビジネス面だけでなく、人間的な面でも成長させるから
人間的に成長するからその人のビジネスも成長するのです。
社長が成長するから社員も成長するのです。
社員が成長するから会社も成長するのです。
ところが<金儲け優先>で起業した人は、その人の<人間性>崩壊していくのです。だから失敗するのです。
(このことは次に書きます)
5.<人生を充実させる>ために始めた仕事は<金銭的な損得勘定>を乗り越えて、新しい可能性を切り開いてくれるから
ビジネスを「始める」だけなら少額の資金でもOKです。
しかし、「続ける」ためには「そのビジネスで儲け続ける」ことが不可欠です。
ところが「成長する」ため、「飛躍する」ためには<ビジネスで人生を充実させる>という取り組みが不可欠なのです。
2007-07-13 Fri
<人生の充実優先>で起業した人が成功し、<金儲け優先>で起業した人が失敗するのはなぜでしょうか?
ここで区別しておきたいのは、私が言いたいのは
<金を儲ける>こと自体が悪いのではなく、
<金儲けを優先させる>ことが失敗の原因になる、ということです。
何度でも言いますが、<人生が充実する>ビジネスを優先させて、結果的に何百億円も儲かる人もいます。
でも、その人は「自分が起業したビジネスで社会に貢献し続けた」ことの当然の帰結として儲かったのであって、「金儲けを優先させたビジネス」で儲けたわけではないのです。
<自分だけが金を儲けること>だけを優先させて起業した人が、最終的には社会から転落していくのは、下記のようなプロセスに陥ってしまうからです。
<起業の原点>「楽な仕事で儲けたい」「手っ取り早く儲けたい」
↓
<選択の基準>「儲かるならどんなビジネスでもかまわない」
↓
<方向を誤る>「儲かるなら多少やばいビジネスでもかまわない」
「儲かるなら多少やばいやり方でもかまわない」
↓
<判断の過ち>「やばいビジネスでも法に触れなければかまわない」
↓
<犯罪への逸脱>「法に触れるビジネスでもバレなければかまわない」
↓
<犯罪の隠蔽>「バレたとしても警察に逮捕されなければかまわない」
↓
<刑事裁判>「逮捕されても裁判で実刑さえ喰らわなければかまわない」
↓
<確信犯>「たとえ実刑を喰らっても儲けた金を隠しておければかまわない」
↓
<人格の崩壊>「どんなことをしでかしてでも金を掴んだ者が強いのだ」
私は個人的にはホリエモンが好きでした。
残念なことに彼の致命的な失敗は「粉飾」です。
それは昔から「成功を持て囃された経営者が陥りやすい犯罪」だったです。
彼の内面には「法に触れることでもバレなければかまわない」という考えが有ったのでしょう。
だから「バレたとしても警察に逮捕されなければかまわない」と高をくくっていたのでしょう。
しかし、逮捕されてしまいました。
まだ裁判中ですから「逮捕されても裁判で実刑さえ喰らわなければかまわない」という考えを捨てきれていないのかもしれません。
だからいまも「たとえ実刑を喰らっても儲けた金を隠しておければかまわない」という信条で生きているのかもしれません。
しかし、いまだに「どんなことをしでかしてでも金を掴んだ者が強いのだ」という考えに凝り固まっているとしたら、彼の<人生の末路>はいま以上に惨めになるかもしれません。
ホリエモンが再出発できるのは、自分の<金儲け優先>の過ちに気付いて、
自分の人生を充実させるビジネスに戻って金をかけずにゼロから始めることです。
たとえ次はまともなビジネスを始めても、
その事業資金が「人を騙して溜め込んだ金」であれば、
その周囲には集まるのは「まともでない人間」ばかりになってしまうのです。
コムスン(グッドウィル)の折口社長も
「介護は楽に儲かるビジネス」と確信して介護ビジネスに進出したから、
「儲かるなら多少やばくてもバレなければかまわない」という<奈落のプロセス>に嵌ってしまったのです。
ミートホープの田中社長もやはり同じです。
「儲かりさえすれば・・・」「バレさえしなければ・・・・」という<奈落のプロセス>そのままだったのです。
2007-07-14 Sat
何度も言いますが、起業は、自分の人生を充実させる<手段>の一つであって、起業すること自体が<目的>なのではありません。
だから、いま無職の人でも、いま人生が充実しているのであれば、無理に起業する必要はないのです。
ビジネス以外で、自分の人生が充実することが判っているのであれば、
そのことに専念すればいいのであって、
何が何でも「起業しなければ人生は充実しない」というものではありません。
いま、どこかの職場で給料を貰って働いている人も、
その職場で働いていることで自分の人生が充実している、
もしくは充実することが期待できるのであれば、
脱サラして起業などする必要はないのです。
「組織の制約の中で働いている限り自分の人生は充実しない」
という人だけが起業すればいいのです。
いま組織の中で働いている仕事が、自分にとって最適なビジネスなのだが、
組織の制約の中で働いているよりも、
自分の考えや判断を優先したほうが充実するのではないか、
と思っている人だけが起業すればいいのです。