2024-11-05 Tue
今回(No.05)は、「第2 事案の概要」の前回(No.04)の〈1前提事実〉に続く、〈2争点及びこれに関する当事者の主張〉部分を下記に転載します。
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2 争点及びこれに関する当事者の主張
(1)本件訴え(のうち本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める部分)の適法性
(原告の主張)
ア 本件伐採木の伐採等は秘密裏に行われており、飯能市や被告らが本件伐採木の売払いがされたことを知ったのは、H法人が被告市長に「阿須山中土地有効活用事業に係る伐採木の処分について(回答)」(甲4、乙16の1枚目。以下「本件回答書」という。)を提出した令和4年6月15日であるから、本件における住民監査請求の監査請求期間の起算日は令和4年6月15日とすべきであり、本件監査請求1 は監査請求期間内に行われた適法なものである。
イ 仮に本件監査請求1が監査請求期間を経過したものであったとしても、H法人は本件回答書を提出するまで本件土地での立木の伐採等の具体的状況等を隠ぺいしていたこと、本件伐採木の売却代金を法人が受け取ったことを飯能市がいまだに確認していないこと等からすれば、法242条2項ただし書の正当な理由がある。
ウ したがって、本件訴え(のうち本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める部分)は適法な住民監査請求を経た適法なものである。
(被告の主張)
原告の上記主張は否認し、争う。
ア 本件訴え(のうち本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める部分)については、いずれも本件覚書が財務会計法規上の義務に違反する違法ないし不当な財務会計行為であったか否かの判断をしなければならない関係にあり、本件監査請求1 は、本件覚書が締結された令和2年9月15日から1年以上経った令和5年3月3日にされたから、法242条2項本文に違反する不適当なものである。
イ 本件覚書やこれに基づき令和3年11月まで作成された伐採木等に関する報告書(乙3の1ないし8。以下「本件各報告書」と総称する。)は、飯能市情報公開条例に基づき、原告が開示を受けることが可能であったし、本件覚書に関して質疑応答がされた令和3年6月16日及び同年12月7日の飯能市議会定例会は一般人が傍聴可能であった上、その会議録はそれぞれ約2ヶ月後に飯能市議会のホームページにおいて一般公開されていた以上、本件伐採木の売却代金相応額をH法人が飯能市に対して支払わなくてよいという点に係る財務会計行為は、秘密裡に行われたものでもなく、原告が認識し、または容易に認識し得たものであるから、法242条2項ただし書きが規定する正当な理由もない。飯能市は本件回答書によってその具体的な売却金額等を知ったが、飯能市がこの売却代金を取得しないことは本件覚書によって既に織り込み済みのことであるから、法242条2項本文所定の記載日がいつであるかに影響するものではない。
ウ したがって、本件監査請求1は242条に違反し、不適法なものであり、また、本件監査請求2は上記と同様の理由で不適法であるし、一時不再理の原則に違反している点でも不適法であるから、本件訴え(のうち本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める部分)は、適法な住民監査請求を経ていない不適法なものである。
(2) 本件伐採木の売却代金についての不当利得又は不法行為の成否
(原告の主張)
ア 本件土地上の立木は飯能市の財産であり、その売却代金も公金であるから、これを公金扱いしないのは法243条に違反し、提案事業の実施にあたって本件土地の立木の伐採処分により売却益等が発生する場合は市と協議する旨定めていた公募要領(乙4)にも違反する。それにもかかわらず、前市長らが本件覚書の締結により、本件伐採木の売却代金をH法人に取得させたのは背任横領行為であるから、H法人に対する不当利得及び前市長らによる不法行為が成立する。
イ 本件契約(甲2)第11条ではH法人は有益費、必要費は請求しないとし、本件覚書(甲3)も伐採等の費用をH法人の負担とするから、H法人が本件伐採木の売却代金を経費に当てることはできないはずであり(H法人としては、本件土地の利用にあたって本件土地の造成が必要であった以上、伐採等の費用を造成予算として計上すれば足りた。)、本件伐採木の売払いによって生じた利益はH法人が負担した伐採等の費用に当てることができるとする本件覚書は本件契約第11条に違反する無効なものであるから、H法人の不当利得及び前市長らの不法行為の成立は否定されない。
(被告の主張)
原告の上記主張はいずれも否認し、争う。
ア 飯能市は、本件土地上にあった立木の伐採等に要する費用と本件伐採木を売却した場合に得られる対価の見積もりを複数の業者から得たところ、前者が後者をはるかに上回ることが明らかになったため、本件覚書を締結したものであり、実際もそのとおりであったから、本件覚書は有効のものである。
イ したがって、飯能市が本件覚書により本件伐採木の売却代金をH法人に取得させることにしたことに不合理な点はなく、飯能市ないし被告市長の裁量の範囲内の行為であって違法ではなく、また、これに基づいて実際にH法人が本件伐採木の売却代金を取得して伐採等の費用に充てさせたことにも不合理な点はなく、違法ではないし、本件伐採木の売却代金について、H法人は不当な利益を得ておらず、飯能市に損失も損害も生じていないから、H法人の不当利得も前市長らの不法行為も成立する余地は ない。
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以上。一つの文章が長く、改行が少ないので、段落の区別が付きにくい文章ですが、原文のままに転記しました。
但し、読みやすくなるように、項目タイトル部分は大文字に、箇条書きの部分は、あえて改行を加えています。
その改行以外は、原文との相違が無いことを確認するために、判決文原本の画像を、後日、Facebook飯能会に投稿します。
一
以上。(全2574字)
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2024-11-09 Sat
判決文の「第3 当裁判所の判断」は、1と2と3に分けられていますので、今回(No.06)は「1」の部分を転載します。
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第3 当裁判所の判断
1 前提事実、証拠(後記各書証)及び弁論の全趣旨によれば、本件覚書の締結に至る経緯、本件伐採木の処分結果等について、次の事実が認められる。
(1) 飯能市は、同市及び飯能市土地開発公社が共有する本件土地について賃貸借形式での有効活用を模索し、平成29年10月、阿須山中土地有効活用事業者公募要領(甲1、乙4)を公表した。同要領によると、本件土地の賃貸借は現状有姿で行うこと、飯能市は瑕疵担保責任を一切負わないこと、なお、提案事業の実施に当たって本件土地の樹木の伐採処分により売却益等が発生する場合は飯能市と協議することなどが予定されていた。
(2) 上記要領に基づく審査の結果、最優秀提案とされたサッカー事業(サッカーグラウンドの整備等)及び同事業に附帯する太陽光発電事業(太陽光発電施設の設置運営等)を提案したH法人(乙5)が事業者として選定され、飯能市は、H法人との間で令和元年9月30日に土地有効活用事業に関する基本協定書(甲15)に係る基本協定を締結した上、同協定6条に基づき、同年12月10日に本件契約(甲2)を締結した。
本件契約によると、本件土地の貸付料は年額120万円とされ(同4条1項)、飯能市の瑕疵担保責任は免除され(同7条)、H法人の有益費、必要費等の償還請求権も放棄されたが(同11条)、伐採した立木の取扱いについては飯能市とH法人が協議の上、決定することとされた(同9条後段)。
(3) 飯能市は、伐採した立木の取扱いを決定すべく、本件土地全体の立木の伐採等に要する費用と伐採木を売却した場合に得られる対価について2社から見積もりを取った。このうち1社の見積書(乙10)によると、本件土地の立木の伐採等の費用は約1億6918万円であったのに対し、その伐採木の売却代金は848万円にとどまり、もう1社の見積書(乙11)によっても、本件土地の立木の伐採等の費用は約1億9512万円であったのに対し、その伐採木の売却代金は約995万円にとどまっていた。
また、飯能市は、念のために売却可能な立木のみの運搬費用に限定した上で、その費用と伐採木の売却代金の見積もりを3社から取り直したものの、上記費用は約5541万円、約4494万円、約4879万円であったのに対し、その伐採木の売却代金は約1011万円、約1167万円、約1050万円に留まっていた(乙12ないし乙14)。
(4) 飯能市は、上記の各見積もりにより本件土地の立木の伐採等の費用がその伐採木の売却益を上回ることが明らかとなったことから、H法人が立木の処分に係る作業を行い、その費用も負担すること、処分費用と売却収益との収支差損に鑑みると伐採木が財産価値のあるものとは判断できないことを理由に、令和2年9月15日、H法人との間で、本件覚書(甲3)を締結した(甲13、乙15)。
H法人は、本件覚書に基づき、令和3年1月以降、本件土地の立木の伐採等を実施し、同年4月2日以降、本件覚書4条に基づき、本件各報告書(乙3の1ないし8)をもって、飯能市に対し、その数量、範囲等を順次報告した。
(5) 飯能市議会では、令和3年6月(乙7)及び同年12月(甲8の2)の各定例会において、議員からは、本件伐採木の売却代金等に関する質問があり、H法人が本件土地の立木の伐採等の費用を当然負担すべきものであり、飯能市が伐採木の売却代金を全額回収すべきではないか、本件覚書に間違いがないのであれば、これを市民に公表すべきではないかなどという質問がされたのに対し、飯能市職員からは、事前の見積もりにより、伐採木の搬出経費が本件伐採木の売却収入をはるかに上回ることが判明したため、H法人との間で締結した本件覚書に基づきH法人に立木の伐採に係る一連の事業を実施させることとしたので、飯能市はその売却先や売却代金は把握していないなどという答弁があった。
なお、これらの質疑応答は一般人も傍聴することができたものであり、その議事録は令和4年2月15日には飯能市議会のホームページ(乙8)上で公開され、原告も同月頃に上記議事録を読んで本件土地の伐採木の問題を知った。
(6) 本件土地の有効活用事業を検証する第三者委員会(名称「山中土地有効活用事業検証委員会」)が設置され、同委員会は、令和4年5月23日、その検証報告書(甲17)を公表した。
この検証報告書によると、本件土地の伐採木については、飯能市が見積もりをとって経費の資産を行った結果、伐採木の売却金額では売却に必要な経費を賄うことができないと判断し、事業者であるH法人にその処分を委ねたものであって、飯能市に損害を与えるものではないと判断された。
(7) H法人は、令和4年6月15日、飯能市に対し、本件回答書(甲4、乙16の1枚目)及び伐採木売払収入等集計表(甲14,乙16の4枚目) を提出し、飯能市は、これにより、本件伐採木の売却代金の具体的金額が382万5000円であることを初めて知った。
原告は、令和4年7月頃までに、情報公開請求により、本件覚書、本件回答書及び本件各報告書の開示を受けたことにより、開示された本件伐採木の売却代金の具体的金額を知ることができた一方、非開示とされた本件伐採木の売却先を知ることができなかった(甲4、乙16の1枚目の「売却・処分先」欄、甲14、乙16の4枚目の欄外の認証者蘭)。
(8) 原告は、本件伐採木の売却代金が公金であるのに、H法人の回答した売払収入額と飯能市が取った最も低い見積額との間でさえ大きな開きがあることやH法人の回答した売却先が飯能市より非開示とされたことなどから、前市長らにより事業者であるH法人の利益を図り、飯能市に損害を与える背任横領行為があったのではないかと考え、本件監査請求1 (前提事実(5))をするに至った。
(9) 本件監査請求1に係る飯能市職員措置請求書(乙1)には、「公金を承知でアカデミーの所得とさせたことは(中略)刑法第247条背任行為に該当する」、「担当職員は刑法第247条背任行為及び刑法第252条法横領行為をアカデミーにさせたとして覚書があっても公金に係る記載がない覚書であるので背任横領と同じ解釈ができる」といった記載がある。
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以上。改行以外は、原文との相違が無いことを確認するために、判決文原本の画像を、Facebook飯能会に投稿してあります。
以上。(全2724字)
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第3 当裁判所の判断
1 前提事実、証拠(後記各書証)及び弁論の全趣旨によれば、本件覚書の締結に至る経緯、本件伐採木の処分結果等について、次の事実が認められる。
(1) 飯能市は、同市及び飯能市土地開発公社が共有する本件土地について賃貸借形式での有効活用を模索し、平成29年10月、阿須山中土地有効活用事業者公募要領(甲1、乙4)を公表した。同要領によると、本件土地の賃貸借は現状有姿で行うこと、飯能市は瑕疵担保責任を一切負わないこと、なお、提案事業の実施に当たって本件土地の樹木の伐採処分により売却益等が発生する場合は飯能市と協議することなどが予定されていた。
(2) 上記要領に基づく審査の結果、最優秀提案とされたサッカー事業(サッカーグラウンドの整備等)及び同事業に附帯する太陽光発電事業(太陽光発電施設の設置運営等)を提案したH法人(乙5)が事業者として選定され、飯能市は、H法人との間で令和元年9月30日に土地有効活用事業に関する基本協定書(甲15)に係る基本協定を締結した上、同協定6条に基づき、同年12月10日に本件契約(甲2)を締結した。
本件契約によると、本件土地の貸付料は年額120万円とされ(同4条1項)、飯能市の瑕疵担保責任は免除され(同7条)、H法人の有益費、必要費等の償還請求権も放棄されたが(同11条)、伐採した立木の取扱いについては飯能市とH法人が協議の上、決定することとされた(同9条後段)。
(3) 飯能市は、伐採した立木の取扱いを決定すべく、本件土地全体の立木の伐採等に要する費用と伐採木を売却した場合に得られる対価について2社から見積もりを取った。このうち1社の見積書(乙10)によると、本件土地の立木の伐採等の費用は約1億6918万円であったのに対し、その伐採木の売却代金は848万円にとどまり、もう1社の見積書(乙11)によっても、本件土地の立木の伐採等の費用は約1億9512万円であったのに対し、その伐採木の売却代金は約995万円にとどまっていた。
また、飯能市は、念のために売却可能な立木のみの運搬費用に限定した上で、その費用と伐採木の売却代金の見積もりを3社から取り直したものの、上記費用は約5541万円、約4494万円、約4879万円であったのに対し、その伐採木の売却代金は約1011万円、約1167万円、約1050万円に留まっていた(乙12ないし乙14)。
(4) 飯能市は、上記の各見積もりにより本件土地の立木の伐採等の費用がその伐採木の売却益を上回ることが明らかとなったことから、H法人が立木の処分に係る作業を行い、その費用も負担すること、処分費用と売却収益との収支差損に鑑みると伐採木が財産価値のあるものとは判断できないことを理由に、令和2年9月15日、H法人との間で、本件覚書(甲3)を締結した(甲13、乙15)。
H法人は、本件覚書に基づき、令和3年1月以降、本件土地の立木の伐採等を実施し、同年4月2日以降、本件覚書4条に基づき、本件各報告書(乙3の1ないし8)をもって、飯能市に対し、その数量、範囲等を順次報告した。
(5) 飯能市議会では、令和3年6月(乙7)及び同年12月(甲8の2)の各定例会において、議員からは、本件伐採木の売却代金等に関する質問があり、H法人が本件土地の立木の伐採等の費用を当然負担すべきものであり、飯能市が伐採木の売却代金を全額回収すべきではないか、本件覚書に間違いがないのであれば、これを市民に公表すべきではないかなどという質問がされたのに対し、飯能市職員からは、事前の見積もりにより、伐採木の搬出経費が本件伐採木の売却収入をはるかに上回ることが判明したため、H法人との間で締結した本件覚書に基づきH法人に立木の伐採に係る一連の事業を実施させることとしたので、飯能市はその売却先や売却代金は把握していないなどという答弁があった。
なお、これらの質疑応答は一般人も傍聴することができたものであり、その議事録は令和4年2月15日には飯能市議会のホームページ(乙8)上で公開され、原告も同月頃に上記議事録を読んで本件土地の伐採木の問題を知った。
(6) 本件土地の有効活用事業を検証する第三者委員会(名称「山中土地有効活用事業検証委員会」)が設置され、同委員会は、令和4年5月23日、その検証報告書(甲17)を公表した。
この検証報告書によると、本件土地の伐採木については、飯能市が見積もりをとって経費の資産を行った結果、伐採木の売却金額では売却に必要な経費を賄うことができないと判断し、事業者であるH法人にその処分を委ねたものであって、飯能市に損害を与えるものではないと判断された。
(7) H法人は、令和4年6月15日、飯能市に対し、本件回答書(甲4、乙16の1枚目)及び伐採木売払収入等集計表(甲14,乙16の4枚目) を提出し、飯能市は、これにより、本件伐採木の売却代金の具体的金額が382万5000円であることを初めて知った。
原告は、令和4年7月頃までに、情報公開請求により、本件覚書、本件回答書及び本件各報告書の開示を受けたことにより、開示された本件伐採木の売却代金の具体的金額を知ることができた一方、非開示とされた本件伐採木の売却先を知ることができなかった(甲4、乙16の1枚目の「売却・処分先」欄、甲14、乙16の4枚目の欄外の認証者蘭)。
(8) 原告は、本件伐採木の売却代金が公金であるのに、H法人の回答した売払収入額と飯能市が取った最も低い見積額との間でさえ大きな開きがあることやH法人の回答した売却先が飯能市より非開示とされたことなどから、前市長らにより事業者であるH法人の利益を図り、飯能市に損害を与える背任横領行為があったのではないかと考え、本件監査請求1 (前提事実(5))をするに至った。
(9) 本件監査請求1に係る飯能市職員措置請求書(乙1)には、「公金を承知でアカデミーの所得とさせたことは(中略)刑法第247条背任行為に該当する」、「担当職員は刑法第247条背任行為及び刑法第252条法横領行為をアカデミーにさせたとして覚書があっても公金に係る記載がない覚書であるので背任横領と同じ解釈ができる」といった記載がある。
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以上。改行以外は、原文との相違が無いことを確認するために、判決文原本の画像を、Facebook飯能会に投稿してあります。
以上。(全2724字)
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2024-11-13 Wed
判決文の「第3 当裁判所の判断」は、1と2と3に分けられていますので、前回(No.06)の「1」に続いて、今回(No.07)は「2」の部分を転載します。
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2 争点(1) (本件訴え(のうち本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める部分)の適法性)について検討する。
(1) 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において、監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには、特定の財務会計上の行為の存否、内容等について検討しなければならないとしても、当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には、当該監査請求に法242条2項の規定は適用されないというべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第51号同14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6号1049頁)。
(2) これを本件についてみると、本件監査請求1における財務会計行為は、財務会計上の行為である本件覚書の締結が違法、無効であることを前提に、これに基づいて発生する実体法上の請求権である飯能市のH法人に対する不当利得返還請求権ないし前市長らに対する損害賠償請求権の不行使を持って財産の管理を怠る事実とするものであるとはいえるものの、本件覚書の締結が違法無効である理由の主眼は、その締結が前市長らの背任横領行為であったという点にある。
そうすると、本件監査請求1を受けた監査委員としては、その監査を遂げるためには、本件覚書の締結に関する前市長らの行為が背任横領行為に当たるかどうかを確定しさえすれば足りるのであって、当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはないから、本件監査請求1について法242条2項の規定は適用されず、本件監査請求1 は適法な住民監査請求であったこととなる。
(3) そして、監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住民は、直ちに住民訴訟を提起することができるのみならず、同一の財務会計上の行為または怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることも許されるから(最高裁平成10年(行ツ)第68号同年12月18日第三小法廷判決・民集52巻9号2039頁)、本件監査請求2もまた適法な住民監査請求であったこととなる。
(4) したがって、本件訴え(のうち本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める部分)は、適法な住民監査請求を経たものであり、かつ、本件監査請求2を却下する旨の通知があった日(前提事実(5))から30日以内(法242条の2第2項1号)の出訴期間内に提起されたものであるから、適法なものである。これと異なる被告の主張は、上記で認定、判示したところに照らして採用することができない。
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以上。改行以外は、原文との相違が無いことを確認するために、判決文原本の画像を、後日、Facebook飯能会に投稿します。
以上。(全1339字)
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2024-11-16 Sat
判決文の「第3 当裁判所の判断」は、1と2と3に分けられていますので、前回(No.07)の「2」に続いて、今回(No.08)は「3」の部分と最後の「第4 結論」を転載します。
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3 次に、争点(2)(本件伐採木の売却代金についての不当利得又は不法行為の成否)について検討する。
(1) 上記1で認定した事実によると、飯能市においては、本件契約上、H法人との協議の上で決定することとされた伐採木の取扱いについて、本件土地の立木を自ら伐採し、売却するまでの費用または売却可能な立木のみの運搬費用とその伐採木を売却することによって得られる利益との多寡を比較すべく、複数の見積もりを取ってこれを検討した結果、いずれの見積もりにおいても、前者の見積額が後者の見積額を大きく上回ることが判明したのであり、かかる見積もり結果が不当であったことを認めるに足りる証拠ない。
(2) そうすると、飯能市として、本件伐採木の売却によるわずかばかりの収入を得るために膨大な費用をかけてまで伐採を行うことに合理性はなく、本件伐採木の売却益を放棄してでも他の費用負担を免れる方が合理的であるとして、本件覚書を締結した前市長の判断が、背任横領行為であったとも、裁量権の範囲の逸脱ないし濫用があったとも認め難く、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
なお、本件覚書の締結に先立つ本件契約上、飯能市の瑕疵担保責任が免除されたり、H法人の有益費、必要費の償還請求権が放棄されたりしたことがあったとしても、本件土地については、現状有姿の状態での引き渡しが元々予定されていたのであって、立木の存在はそもそも瑕疵にあたるものではないし、H法人がこれを撤去したところで、その費用が当然に有益費が必要費に該当するものではないから、上記判断を左右する事情であるとはいえない。
また、本件伐採木の実際の売払収入額が事前の見積額と大きく相違したことがあったとしても、H法人がその事業遂行にあたって費用対効果の観点から真に必要な範囲での伐採に限定したため、実際の伐採量が当初予定されていた伐採量に達しなかった可能性や、実際の伐採当時における伐採木の需給関係の変動や本件伐採木の品質、状態により当初予定されていた売却先見込額に達しなかった可能性があるから、やはり上記判断を左右する事情であるとはいえない。
なお、原告による情報公開請求において、本件伐採木の売却先が非開示とされたことがあったとしても、飯能市情報公開条例5条所定の非開示情報に該当すると判断された結果に過ぎず、これをもって前市長らによる背任横領行為があったと推認することもできないことはいうまでもない。
(3) したがって、本件伐採木の売却代金について、H法人の不当利得や前市長らの不法行為はいずれも成立しないというべきである。これと異なり、原告が種々主張するところは、上記で認定、判示したところに照らして、いずれも採用することができない。
第4 結論
以上によれば、本件訴えのうち被告らに対する本件情報開示請求に関する部分並びに本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告財務部長に求める部分はいずれも不適法であるから、これを却下し、原告のその余の請求(本件不当利得返還請求及び本件損害賠償請求を被告市長に求める請求)はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、自分の通り判決する。
さいたま地方裁判所第4民事部
裁判長裁判官 田中秀幸
裁判官 中島朋宏
裁判官 丸山智大
別紙 物件目録
1 所在 飯能市大字阿須字山中896番
地積 4万6391㎡
2 所在 飯能市大字阿須字山中897番
地積 4万6636㎡
3 所在 飯能市大字阿須字山中898番
地積 3万8078㎡
4 所在 飯能市大字阿須字山中899番1
地積 3万7360㎡
5 所在 飯能市大字阿須字山中899番2
地積 1697㎡
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以上。改行以外は、原文との相違が無いことを確認するために、判決文原本の画像を、後日、Facebook飯能会に投稿します。
以上。(全1748字)
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2024-11-22 Fri
住民訴訟とは、簡単に言うと、「住民が自治体を訴えること」です。
但し、訴えることができるのは、「その住民が財産上の金銭的な損害を被ったコト」に限られています。つまり市のやり方には賛成できない!」という単なる行政上の賛否や是非は、裁判にはしないことになっているようです。
だから、今回、元市役所建設部長の五十嵐勉氏が、飯能市の新井市長や幹部職員を提訴したのも、「市有林伐採木の売却代金」という市民全体の公有財産の取扱いについて、「市民の共有財産が損害を受けた!」という理由での裁判なのです。
今回の住民訴訟の意義は、原告の五十嵐勉氏が、地元紙への寄稿や裁判報告会等で述べていたように、「この市有林伐採木売却代金問題について多くの市民について知って欲しいから」ということです。
しかし、当裁判を、提訴の段階から注目してきた私としては、その意義は認めるとして、下記のような幾つかの疑念を抱いていました。
❶地裁での第1審で、仮に五十嵐氏が敗訴になった場合、期日以内に高裁に控訴しなければ、第1審での敗訴の判決が確定してしまうことを知っていながら、五十嵐氏は当初から、周囲に「敗訴になったとしても高裁への控訴はしない!」と公言していたことが生み出す〈大きな影響〉についての疑念です。
❷五十嵐氏は、〈控訴しない理由〉として、「個人が一人で住民訴訟の行政裁判を続けるのは、体力・気力・経済力と時間的な余裕が無い」ことを挙げていました。しかし、今回は「市民の公有財産の損得に関する住民訴訟(行政裁判)」なのだから、他の住民も原告団に加えれば、五十嵐氏個人の負担はかなり軽減できるのに、「原告を自分だけに限定して増やさなかった」ことへの疑念です。原告団が大勢いれば、五十嵐氏の大幅に削減して裁判を戦えたのに、「どうして?」という疑念です。
❸当裁判での〈原告敗訴〉ということは、逆から見れば〈被告勝訴〉であり、一般的には「飯能市は今回の裁判に勝った」というイメージになります。
しかし、今回の裁判での原告敗訴は「飯能市は、市有林場伐採木売却代金を事業者(一般社団法人飯能インターナショナルスポーツアカデミー)に返還請求する必要は無い!」というのが第一審判決であって、「飯能市が進めてきた阿須山中土地有効活用事業には何の問題も無い!」ということの判断ではないのです。ところが「市は勝訴した」という言葉の印象だけで、それを多くの市民が「市が行ってきたことは何も問題は無い!」と思い込んでしまうのではないか?、という疑念です。
❹もし、今後の市議会一般質問で、阿須山中土地有効活用事業の不明点を追及してきた4人(新井・金子・滝沢・長谷川)の市議が、この事業に関する質問をしたときに、市側は「それはもう司法の場で決着がついたことだから」という口実で、質問そのものを拒否するのではないか?という疑念です。
尤も、4市議は、この❹の疑念に対しては、〈別な視点〉からの追及を考えていると思うので、当ブログでは、それも注視していこうと思います。
以上。(全1220字)
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